奏でるひとびと。まちという音楽。 – シズオカオーケストラ –

奏でるひとびと。まちという音楽。

> グリーンドリンクス静岡 > vol.11「幻のシズオカ都市計画が教…

vol.11「幻のシズオカ都市計画が教えてくれること」


■2013.4.14 green drinks 静岡 vol.11
「幻のシズオカ都市計画が教えてくれること」

image

4月14日(日)おなじみのコマトラで開催されたgd静岡、なんと30名を越す皆さんにご参加いただきました!

ゲストは、ふだんは、静岡市都市計画課で働いている今川俊一さんと、オルタナティブスペーススノドカフェのオーナーとして地域に関わり続けている柚木康裕さん。「幻のシズオカ都市計画が教えてくれること。」というテーマ通り、埋もれてしまった計画をあえて見ていくことで、都市計画という作業のこと、静岡のことを改めて考えてみる機会となりました。

image
image
(奥:柚木さん/手前:今川さん)

今川さんは学生時代から地域プロジェクトに関わり、都市計画のコンサルタント会社に就職、その後静岡市へ転職という少し変わった経歴をお持ちの方。この町で育った私とは違う風に、この静岡が見えているのだろうなと漠然と感じます。

そんな今川さんが静岡を表現した言葉は“素顔が美人な町”

山や川など天然の地形の上にコンパクトに作られた城下町のスタイル、というベースがあった上で、戦争や大火からの復興という転換点を経ながら発展してきた町。素顔美人!この言葉を聞いただけで、嬉しくなっちゃいますね。

image

この日今川さんは、“幻の都市計画”を3つピックアップしてくださいました。

1つ目は、徳川家康時代の都市計画。
なんと、あの駿府城よりもさらに安倍川寄りにお城を作って直接大型船を引き込み、駿府を国際都市にしようとした構想!ロマンだ!この時代に城下町の町割ができたわけですが、それはお殿様だから容易にできた事ですね。ザ・トップダウン。当然、今はそうはいきません。

2つ目は、建築家・専門家による都市計画。
1970年に世界的な建築家である丹下健三さんを中心に企画された”静岡清水地域都市開発基本計画”には、静岡と清水は一体の都市であるという概念で、静岡から清水までモノレールが通っていたりと、地元の人から見たらSFレベルのプランが描かれています。(もちろん分析があった上でやっているわけですが。)幻になったとはいえ、こんなプランの存在にワクワクしないわけがない!今川さん曰く当時は「拡大の時代」で、現在はむしろ逆のベクトルであることは明白だけれども、都市としての生きる道を探す上でこの計画から学ぶことは多そう、とのこと。

そして3つ目は、いわゆる“街中の人たち”が構想した商店街将来プラン
市役所から常磐公園を繋ぐ公園通りである”青葉通り”を車両が横切らないためのU字型の車道、駅から直結した商店街である”呉服町商店街”の2階部分を有効活用するためのプロムナード化など、調査段階ではあったものの興味深いプランがあったようです。その後現在の形となり、実現に至らなかったこれらのプランは、やはり”幻”に。でも今川さんはこう続けました。

「実現には至らなかったけど、捨て去っていい出来事かというと、そうではなく、なぜそういうプランを考えたのかを少し検証する必要があると思うんです。」

image
image

(今川さん)「そもそも全てのプランは”街中を快適に歩いてほしい”という願いから生まれたもの。呉服町商店街はもともと長屋が並んでいたエリアでしたが、戦争と静岡大火によって全焼、その後コンクリートの建物を作ることになったという経緯だったため、一体の建物は作る(長屋)けど、壁は分けて個々の土地の上に床を作るという、特殊な形でした。実際とても複雑なケースが重なっており、課題も多いのが現実です。実現できなかったにせよ、その心は何かという課題は今も町に残っているもので、これからも真剣に考えていかなければならないし、ヒントとして幻のプランを見ることができると思っています。」

そしてこの後、この3つの例から見えてくること、これらをどう今の日々に生かすかという話に続いていきます。

image

(今川さん)「まず大前提として、計画しようとしている都市の現実はとても複雑である、ということ。土地の権利も分かれているし、独裁的な社会では無いから、たくさんのことを組み合わせないと実現できないし、目的も決してビジネスだけじゃなく、歴史や文化、暮らしを豊かにすることなど、計算できないことまで含めて考えていかなければならない。その現実全てを表す計画はないけれど、どういう風に課題を解決するかは、形として見せなくてはならない。プランを見る側も、それぞれの現場で”都市計画(プラン)”がそうやって作られていることを理解したほうが、現実へよりよい議論やアクションを生み出せると感じています。」

例えば、その土地の不動産としての分析データから出てくる賃料と、”隣にとても素敵なお店がある”という付加価値から出てくる賃料は違うように、都市には、仮想的ではあるけれど実証できるものやデータ(“業界”的には”サイエンス”と呼ぶそう)と、理論で語り尽くせない複雑さや不確定要素(こちらは”アート”と呼ぶそう)が存在しているという話。その“サイエンス”と”アート”の両方をわきまえ、双方間を行ったり来たりすることで、徐々に現実の都市を動かしていくのが宿命なんだという今川さんの言葉が響きました。(故中村勘三郎氏が語った”型”と”型破り”の関係にも通ずる?)そういう中で”幻”が生まれてくることは、ある意味必然なのですね!

実際、2つ目の例だった丹下健三氏のプランの前書きには「私たちは市民が積極的に参加できるような計画の場を作ること、又、都市の将来像に対するビジョンから具体的な建設のイメージにいたる道筋を作ることなどによって計画と現実のすきまが埋められていくことを期待しております。」とありました。

image

ここで柚木さんから「都市って計画できるの?」と鋭い質問が。
今川さんは、同じ土地に対して過去から蓄積されてきたものを前提として(例えば静岡なら城下町という歴史や、それこそ幻となった計画)、さらに時代時代でアップデートしていかないと都市計画は名乗れないと答えます。現在であれば、ハードの量を増やしていくのではなく、既に存在するストックの上に何を乗せていくかという課題を解決していく役割を担っていると。

image

この数年間、今川さんが主に関わってきた地域の一つは、2011年に閉館した映画館跡地や七間町周辺。

映画館跡地の一部は静岡市が買い取りいずれ水道庁舎が建設される予定ですが、当初、建設開始まで更地のままとなる予定だった跡地では、地元の方々が参加した空き地活用プロジェクト”アトサキ7”がスタートし、期間限定ですが、七間町エリアの新しいスポットとなっています。実はそういった“ソフト”の組み立ても、将来のまちの姿を見据えるために必要なプロセスとして都市計画課で仕掛けている仕事の一部なんだそうです。(私、さらっと書いてますが、実現に至るまでのプロセスは相当大変だったはず・・・!!)

もちろん跡地一帯は広いため、地権者は静岡市だけはありません。他の地権者さんにも、同じ時期に一体だった町並みを変えていくということを認識してもらい、次の時代でどういうエリアにしていくかをみんなで考えるための議論を進めているそうです。その町の将来を考えるための地道な努力や作業は、決して回り道じゃないという言葉が印象的でした。

また、その間も、この地区では、駐車場に面した蔵を使ってのバレエ鑑賞会や、街の通りを”舞台”として使った音楽や演劇のイベントなど、“文化”をキーワードにした街の動きが出てきているようです。そういうことも積み重なって”ポスト映画館街”の七間町のまちがつくられていくのでしょうか??

“街中に行く新しい意味合い”の可能性を信じて、誰と組むか、どこでやるか、など作戦をたててきた今川さん。こういった企画を”役所”から街の人に働きかけるという動きは、これまであまりなかったようですが、今川さん自身は意義を確信しているし、企画を外へ出すと共鳴してくれる人もいたので、とあくまで淡々と話します。この日の参加者の中にも一緒にプロジェクトを実現させた方がいましたが、今川さんとのやり取りを見ていると、一緒に楽しいことをやったぞ、というフラットな雰囲気なんです、これが!

image 

私が初めて今川さんとお会いした時の印象は”穏やかで、気長で、なんとなく素朴な印象の方”でした。この日も参加者からの「役所ってことは当然異動がありますよね?」という質問に、都市計画課だけが都市計画してるわけではないし、1年の勝負があるように5年10年のチャンスをつかむという捉え方もあると淡々と話してくれます。地元の人達の話にじっと耳を傾け、わかりやすい言葉で説明をし、素敵な未来の静岡を語りながら、でもあくまで現実的に進めていく・・・そんな人柄はもちろんのこと、都市はいつか完成するものではないし脈々としたものであるという捉え方をしなければというスタンスも、一緒に町を考えていく”市役所の人”として頼り甲斐ありすぎです!

そんな今川さん。この日のトークライブの最後にこんなことを語ってくれました。もちろん、淡々と、笑顔で。

「やっぱり町は“愛”がないと、手間をかけるとこまでいかないんです。だからどうやって町を好きになるかが出発点じゃないかなって。」

image

柚木さんの絶妙な進行と合いの手のおかげで、都市計画って何?という話から、たくさんの裏話、さらには奥さんとの出会いの話(!)まで幅広く聞くことができ、シリーズ第1回目としてはとても充実した90分となりました。

ん?シリーズ・・・?と思われたあなた、そうなんです!今川さんと柚木さんのお話、正直言って90分では全然終わりませんでした!ということで、次回に続きますよ!

トークライブの後は、皆さんからの告知&フリートークタイム。コマトラのおいしい料理を楽しみながら、雨が降り出したことにも気づかないほど盛り上がりました。参加者のみなさん、ありがとうございました!

次回グリーンドリンクス静岡は5月26日(日)に開催決定。ゲストは同じく今川さんと柚木さん、このお二人だけでも濃い話になりそうですが、さらにもう1名を新たにお迎えする予定。どうぞお楽しみに!

☆告知DMをご希望の方は gdshizuoka@gmail.com までご一報ください。

image
image
image
image

■green drinks 静岡、これまでの開催レポートはこちら

report & photo by iz_inoue


Writer : izumiizumi
Category : gd 静岡

Posted at :

> グリーンドリンクス静岡 > vol.11「幻のシズオカ都市計画が教…